兵庫ゴールドトロフィー

 例年はただでさえメンバーが揃いにくい短距離ハンデGⅢであり、しかも有馬記念東京大賞典の合間というあわただしい中の開催につき「気がついたら終わってた」なんてことにもなりがちな兵庫ゴールドトロフィー。だが、今年はJBCスプリント勝ち馬スーニをはじめ中央勢がなかなかのメンツ。さらには目下短距離では地方最強レベルのラブミーチャンと、ここまで大井・黒潮盃を含む10戦10勝と底を見せていない地元園田オオエライジンが参戦したことで、にわかに翌年以降のダート界を占う興味深い一戦となった。

 さて、このレース最大の問題がオオエライジンの取捨であることは間違いない。なにが難しいって陣営も認めている通り「ソラを使う」馬なので、近走はギリギリまで追い出しを遅らせる競馬が続いているのだ。ひとまず、大井遠征となった黒潮盃見てみよう。

 ラップの方は
12.4 - 11.9 - 13.1 - 12.3 - 11.8 - 12.3 - 12.7 - 12.3 - 13.1(37.4-38.1)
 といった形で、中間11秒を挟むよう緩まない流れの中、先行で押し切ったならまず完封勝利だろう。実際、前日同距離で行われたB3・1組戦のラップは
12.7 - 12.2 - 12.7 - 12.6 - 12.3 - 12.6 - 13.1 - 12.5 - 12.6(37.6-38.2)
 で、かつこちらの決まり手は中段からの差し切り。黒潮盃組からはゴーディーがその後大井マイルで準重賞を勝っているし、南関A級中位くらいの地力は見せたと考えてよい。

 だが、これだけでは交流のこのクラスと戦うには心もとない。そして黒潮盃の次走は、笠松競馬場で行われた岐阜金賞。当たり前のように単勝元返しの圧倒的支持を集めたこのレースで、やはり例の悪癖が顔を出す。

 ひとまず、スタートがイマイチだったのは置いておく。アムロにあれだけ楽な手ごたえで並びかけておきながら、直線追えどもさっぱり突き放せなかったのがどうなの?結局半馬身差で勝ちはしたが、アムロはナムラダイキチ・エイシンフレンチに完敗していることから、現状ではせいぜい中央準OP善戦クラス。きっちり千切ってくれるくらいでないと……

 極め付けが、地元に戻った前走・スポニチなにわ賞。

 まあ、あの出遅れを巻き返したのは素直に偉いと思いますよ。でも残り100から追い出して、どうにも3角で見せたようなギアのかかりが感じられない。最後なんて、3着のエーシンブランに差を詰められているくらいじゃないか。このレベルの相手とこんなぬるい遊びやってるようじゃ、交流クラスじゃとてもじゃないがどうにもならなん。

 結局オオエライジンにとっては、ここは試金石というよりもショック療法に近いのではないか。そしてぶっつけ本番で負荷をかけただけで、簡単に乗り越えられるほどその壁が低いのかというと……そりゃこの馬が園田のテイエムオペラオーである可能性もあるけれど、久々の短距離含めて出遅れればもう終わりだし、今の調子じゃ直線置いていかれて5着・6着が関の山。地元戦につき過剰人気する予感もあり、期待はしたいがここは見送りが妥当なのでは。まあ1400戦だけに枠がインなら兵庫ダービーのようにハナを主張してそのまま押し切りを狙う可能性もあったが、今回は大外枠ですぐ内にラブミーチャンがいるのであまり無茶な先行策はやりにくいだろう。基本的には中段からの捲り含みでレースを組み立てていくはずだ。

 とまあ長々と語ったところで、それでは本命をどうするのかという話へと移る。中央勢のうちエーシンフォワードについては、久々のダートということもありひとまず静観。ダイショウジェットも相手が弱かったオーバルスプリントを除いて、今年は小回りでは差して届かずに惜しい競馬が続く。特にスーニ相手では連敗しているだけに、ここでも勝ちきるまでは難しいと見てヒモまでの評価としよう。となると、残る2頭、セイクリムズンとスーニの順番が問題だ。一応、この2頭は前々走・前走と直接対決をしている。ここでは、とくに前走であるJBCスプリントを見てみよう。

 ラップは
12.0 - 10.4 - 11.1 - 12.3 - 11.9 - 12.4(33.5-36.6)
一見、ラスト35秒台の鬼脚を使って差しきったスーニが別次元の競馬をした印象を受けるかもしれない。だが、このラップから12秒代半ばで上がったセイクリムズンだって、高速馬場を考慮しても例年なら十分勝ち馬の水準にあるレースをしている。東京盃JBCと差しが効く大井外回りから園田へと場所を移し、斤量面でもスーニの59.5に対してセイクリムズンは58と有利。先行策を取る分には突っぱねればいいだけの楽な枠でもあるし(包まれれば終わりだが、まあメンバー的に大丈夫だろう)、豊への乗り変わりで新味を見せることも一応期待できる。ひとつここはセイクリムズンの逆転に賭けてみたい。

 最後に、セイクリムゾンを買うのならば、同じくJBCで前から好走したラブミーチャンを評価すべき、という声も聞こえてきそうだ。確かに東京盃JBCと早いラップからかなり強い競馬を見せているが、前走オッズパーク・グランプリでは長距離輸送もあってか馬体が大幅減となってしまった。さらには5月からほぼ休み無し走り続けてきただけに、そろそろ調子落ちする頃合い。もともと1400は長いくらいの馬でもあり、ここは馬体が戻っていたらヒモに加える程度に留める。

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<まとめ>
◎1番セイクリムズン
○3番スーニ
△2番ダイショウジェット
×9番ラブミーチャン

カンパ→ 乞食100