東京大賞典

あれから、もう1年が経った。確かにあの開催は不可解なほどに時計が早い馬場だったとはいえ、良馬場ダート2000mを2:00.4でレコード勝ち。ましてやそれが途中まったく息をいれることなく、淡々とラップを刻んで逃げたものとはまさしく化け物。これにはその覚醒に半信半疑だった私も素直に驚き、本当にいい物を見せてもらったとしみじみ感じ入ったものだった(もっとも、すぐに財布から染み出してきた寒さがキリキリ身体をやりだしたのだが)。

 そして、目下のところスマートファルコンは競馬界屈指のヒール役でもある。なんてったって、中央競馬で最後に走ったのが2008年の夏のこと。それからは長く交流GⅢ荒らしとして弱い者いじめに精を出し、やっと一線級と対決するようになったと思えば、今度はここ1年以上に渡って自分に有利な南関東競馬から出てすらこないという徹底ぶり。あれだけの強さを見せつけながら中央競馬で走らないのは、一部のファンからすればそりゃ多少の文句も出ようというもの。だからこそ、フリオーソトランセンドエスポワールシチー、だれも出て来ない明日の東京大賞典。こんなところで負けるわけにはいかぬ。さっさと転向して自ら栄冠を掴むにせよ、ヒールらしく最後は死闘の引き立て役を演じるにせよ、それ相応の相手と舞台が揃わねばならない。どこをどう考えたって、ここのメンバーはファルコンを「使う」にはあまりにもったいない役者ばかり。とっとと叩き潰して悪名を大いに高めつつ、更なる大舞台へと足を進めようではないか。当然、超絶対視の大本命。

 さて、相手の方だが対抗にはJCD2着のワンダーアキュートを挙げたい。展開的には出遅れたことがかえって利となった感もあるとはいえ、外傷のおまけつきながら直線馬群の狭いところをするするっとよく伸びた。

 春先にもアンタレスSで昨年の3着馬バーディバーディに先着し、東海Sでは前から押し切る強い競馬を見せている。今年に入ってからは大崩れしておらず、その安定感は大きな魅力だ。先行集団の尻からじっくり見据えて競馬をすれば、差し損ねそうな相手は見当たらない。昨年のように輸送で馬体大幅減といったアクシデントがない限り、今回は2着最有力か。

 そして、続く3着筆頭候補はシビルウォーJBCではトランセンドに続く3着を確保したとはいえ、次走の浦和記念ではラップが
12.8 - 12.4 - 13.1 - 12.9 - 12.9 - 12.9 - 12.8 - 12.4 - 13.3 - 13.1(38.3-38.8)
 とわりあい落ち着いた流れだったにもかかわらず、最後直線だけでボランタスに差し切られてしまった。直接対決の結果を見てもワンダーアキュートに先着できるとは思えず、ここはいつもどおり先行して、どうにか粘りこみ3着を死守できるかどうか。

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 また今年は不完全燃焼なレースが続いているが、本来の実力を考えればテスタマッタシビルウォーを逆転する目は十分にある。今回は2010年の川崎記念フェブラリーSと続けてGⅠで結果を出した岩田騎手の起用にも成功したことだし、ここまで軽視されているようならヒモには加えておく価値は十分。一方で残る中央勢ヤマニンキングリーは、よくよく見比べてみるとシリウスSの相手はイマイチなレベルで、ラップ的にも中間13秒台を3度挟んだ緩い流れ。まだダート3戦目だけにもう一化けする可能性もあるが、ここは相手関係・適正含めて人気ほどの好走は疑問。

 最後に、真ん中枠に固められた地元南関勢3頭をみてみたい。ぱっと見の実績だけ見れば交流重賞でもたびたび場圏内に飛び込み、ボランタスとも接戦のカキツバタロイヤルが一歩リードしている。だが前走は3頭揃って勝島王冠で接戦を演じ、カキツバタは3着に終わった。

 このレースのラップはなかなか面白く
12.8 - 12.4 - 12.9 - 12.6 - 12.1 - 12.1 - 12.9 - 12.0 - 12.5 (38.1-37.4)
 入りはともかくとしてバック・ストレッチで12秒台前半が連続して飛び出す加速は、南関重賞としてはキツい流れ。それでコーナー回って、直線最初の1ハロンを12秒というのもなかなか優秀である。スマートファルコンが引っ張るとコーナーで引き離されて終了だろうが、ヒモに限れば案外交流のここで通用するようなペース適性を見せてくれた。レース自体は結果的にスマートインパルスの前が詰まって追い出せずにいたのが最後の余力を残すこととなり、内から掬い上げる形で恵まれ1着。この馬はお盆開催ではJBCで5着だったテラザクラウドと同時計、かつより優秀な上がりで駆けている。もっとも総合的に見ると、使ったスパートの長さでツルオカオウジを上位に評価するとしよう。なによりもこと高額賞金となれば騎乗が様変わりする戸崎を起用してきただけに、地力劣勢の中でもし中央勢に食い込むならこの馬では。カキツバタロイヤルは実のところテラザクラウドには直接対決で3連敗中で、前走もあの完敗とあってはここにきての逆転はイメージしにくい。

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<まとめ>
◎12番スマートファルコン
○4番ワンダーアキュート
▲2番シビルウォー
△11番テスタマッタ
△7番ツルオカオウジ
×8番スマートインパルス

カンパ→ 乞食100