第14回兵庫ダービー

 第1回目は園田ダービーの名で行われた兵庫ダービーも、今年でついに14回目を数えようとしている。これはつまり、兵庫競馬がサラブレッドを導入してから既に15年の歳月が過ぎたということ。実際、今年春の福山競馬場の廃止によりレッツゴーカップらが退厩したため――まだ登録は抹消していないようだが――、2013年6月現在競馬場で走っているアングロ・アラブ競走馬はもはや存在しなくなってしまった。私くらいの世代となるとアラブ系競走に対して直接の思い入れはあまりないのだが、しかし、東の大井・アラブダービー――1964年まで春の特別。なお、蛇足ながら1961年より計7回開催されたオリンピック競馬には、毎年このレースが当てられていた――と対をなす全国の3歳アラブ最強馬決定戦・楠賞全日本アラブ優駿を開催し、全国交流競走となった1972年の全日本アラブ大賞典を勝ったタイムラインを擁するなどアラブのメッカと謳われた園田競馬栄光の歴史を振り返るとき、さすがに一抹の寂しさを感じずにはいられない。もっとも、タイムラインはのちにかのスマノダイドウとともに地方競馬最後の大騒擾・園田事件の当事馬となり、それが近隣住民との間に長きにわたるしこりを残すことにはなるのだが。

1993年・第32回楠賞全日本アラブ優駿。勝ったのはまさかまさかの荒尾競馬所属・ダイメイゴッツ。
 そして、当初は1着賞金1000万円という大台が売りだった兵庫ダービーも、今年はついに1着賞金が600万円まで落ちてしまった。まあ経営が苦しいこの御時世それはしかたがないとしても、その一方で、今年から菊水賞の賞金が350万円から500万円まで引きあげられているのは一見して不可解である。そもそも園田の2・3歳路線は長らく「リミテッド競走」と呼ばれる園田デビュー馬限定競走がほとんどで、この兵庫ダービーやたんなる一重賞に成り下がってしまった楠賞も当然その中に含まれていた。他地区デビュー馬がダービーに出走するには菊水賞で3着以内に入り優先出走権を獲得するしかなかったと記憶していたが、今年の出走馬を見る限りどうやらその縛りはなくなった模様。気の利いた馬はまずは道営で卸すことが基本となっている近年の地方競馬の情勢からしてこれは当然の判断だけれど、嫌な言い方をすれば、これまでは余所者が出走できる菊水賞の賞金だけ削っていたともとれるなぁ。騎手が移籍する時の厩務員強制規定といい、どうにも園田競馬にはこうした他を見下した施策が多すぎる。園田は昨年から12月の園田金盃をグランプリとして遇しファン投票の実施・賞金の倍増(1着賞金500万円→1000万円)を行うなど色々と経営再建に向け手を打っているようではあるが、肝心の切り札だったナイター開催も売上面では苦戦が続いており、どうにも上向き調子とはいかないようだ。

60.9-12.7-12.1-12.9-12.8
 さて、ここは菊水賞を逃げ切ったユメノアトサキの二冠達成の可能性が高いと見る。前走のじぎく賞では最後に名古屋から遠征のウォータープライドに迫られたが、ややスロー気味から入ったとはいえ坂の下りを12.1で飛ばしつつ、最後まで12秒台でまとめた完成度の高いレースぶりは光る。枠がやや内過ぎるのが怖いくらいで、スムーズに出られればペースを握って100m延長のここでも脚色は衰えないはずだ。そしてこれに対抗するのが、菊水賞3着のハルイチバンを相手に含む三連勝でここに臨む木村健騎乗・モズオーロラ。前走の特別戦ではみっちり外についての叩き合いになりながら、最後にもうひと根性出して差し切り。あのしぶとい走り方は距離延長にも対応できそうで、1700戦でも最後どうにも粘りに欠ける菊水賞2着・イチノバーストよりも今回は期待できるだろう。

60.3-13.1-12.1-13.6-13.4

60.6-12.6-12.6-13.3-13.3
 昨年2歳重賞を2勝したエーシンクリアーも骨折開けながら人気しそうだが、2歳時ということを差し引いても、坂下りの捲り脚はともかく直線に入ってからは案外な走り。一瞬の脚しか使えないタイプとすると前にしぶとい馬が揃う今回は展開的に微妙で、なにより倒してきた相手も今から振り返るとイマイチな感もある。ここは様子見が妥当だろう。それに対して、面白そうなのが中央から転厩して3勝中のサヴァイバルダンス。どうにもコーナーでみっちり抑えないと暴走する気の荒さがあるようで、実際前走はそれでバタつく不利があった。それでも、毎回直線に入ってからのダッシュだけで計ったように差し切るあたりそこそこ力はある。距離延長をしたところでよい方向へ変わるとも思えないが、直線だけで離れた2・3着に突っ込んでくる姿は十分にあるのでは。ヒモに一考。

38.5-12.3-12.7-13.7-13.1
―――――――――――――
<まとめ>
◎2番ユメノアトサキ
○9番モズオーロラ
△11番サヴァイバルダンス