桐花賞

 競馬と雪は相性が良い。もちろん青空のもと、緑のターフに栄える馬の姿も楽しいものだが、雪に閉ざされた静かな世界を、サラブレッドがその馬体を揺らし颯爽と駆けるのは格別である。直線最後の熱い追い合いなどで実際に雪がちらついていれば、なおのこと叙情をそそられる。静と動、寒と暖のコントラストが本当に美しい。そしてこれらをたっぷりと噛みしめることができるのが、盛岡競馬場の使用が終了した後に行われる12月からの岩手・水沢連続開催や、ロードヒーティング導入により通年開催となった帯広・ばんえい競馬。とりわけ水沢競馬場のコースの周りは建物も少ないので、まるで雪深い山奥の里で、ひっそりと競馬が行われているような感覚が楽しめる。そして、岩手競馬は冬休み入りを前にして、古馬戦線がいよいよ最終局面。大晦日岩手競馬グランプリ・桐花賞と最終開催最終レースに行われるトウケイニセイ記念をもって、難多かった今年の岩手競馬もようやくフィナーレを迎える。

 といっても、見た目は綺麗な雪のレースも予想にはなかなか難儀なところがあるのも事実だ。現場で見る方・乗る方にとっては寒くて寒くてたまらないだろうし、目に見る分には楽しい雪も、馬の脚元に目をやれば、当然どろんこの湿った馬場がついてまわる。特にこの時期の水沢は馬場の凍結を防ぐために凍結防止剤を投入するが、その為に降れば降るほど馬場が水分を含み続け田んぼ状態になることも珍しくない。となると当然馬ごとの得意・不得意が出てくるもので、年末の水沢開催は毎週毎週適性のない人気馬が吹っ飛んでは、大きな穴が飛び出る事態となる。そのためもあってか、桐花賞は毎年リピーターの好走が多い。馬場適性の見極めこそが、このレース予想の肝と言えるだろう。

 しかしまあ、今年の岩手競馬からは随分といい馬たちが一線級から去っていった。ロックハンドスターが府中の大観衆の前で散り、その後継となるはずだったベストマイヒーローは不可解な登録抹消を迎えてしまう。コアレスレーサーは大一番のマーキュリーCを目前にして故障し、震災の影響もあってかメイホウホップは佐賀へと移籍。さらに一応は岩手に残っているとはいえ、リュウノキングダムは相変わらず安定感が皆無だし、マヨノエンゼルは寄る年波による衰えは隠せずといった格好で今回は出走していない。となれば、若駒達としてはここで一気に世代交代をアピールしたいところだろう。実際出走馬を眺めてみても、7歳以上の5頭が3・4歳世代を迎え撃つ格好になっている。かといって、若い方も大将格の2頭を欠いている中で、歴戦の猛者にどれだけ迫れるのか。なかなか興味深い一戦である。

 そこで、本命は若手一番のカミノヌヴォー。南関時代はどうもムラっけのある馬だったが、岩手に戻ってからは見違えるような走りを披露。「ロックハンドスター・メモリアル」を冠したダービーグランプリでは、北海優駿馬で南関B級でもよくやっているピエールタイガーや、東海ダービーアムロと僅差の2着だったミサキティンバーに楽勝している。初の水沢・不良馬場がどう出るかだけが問題だが、ここでは抜けている実力を素直に信頼することにしたい。

 そして、次点には昨年3着のベテラン・サクラマジェスティーを挙げる。今年は北上川大賞典5着などいいところがなかったが、前走のA級戦では突如の復活勝利を挙げた。時計的には前走はそれほど評価できるものではないが、昨年も冬の水沢だけはレースぶりが際立っていた印象。復調さえしていたとすれば、今年のメンバーなら2着は十分にあり得る。

 同じく、前走水沢に変わって好時計で駆けたコアレスランナーも侮れない。A級に上がって未だ日が浅いとはいえ、マイル1:40.6の時計は翌日の特別戦白嶺賞よりも0.2秒早い。元々盛岡が苦手で水沢中心に使われていた馬なので、今年盛岡だけでA級まで上がってきたのは大きな成長の証。冬の水沢への適性も昨年の走りで証明済で、一発の可能性は十分だろう。

最後にヒモとして、ツルマルヤマトとトーホクキングを選択。前者はどうにも勝ちきれないが、しぶとい競馬ぶりは好印象。後者はやはり格下も、ここ2戦は濃い内容で連勝中。脚質的にも距離が伸びた方がよさそうだし、直線展開が向けば3着までには突っ込めると見る。

 一方で北上川大賞典勝ち馬にして人気の一角のマイネルビスタは、前走あまりにふがいない走り。馬場への適性でやや疑問が残り、さらには中央時代も中山・福島・函館と道中起伏のあるコースに良績が集中している。坂のある盛岡から、水沢へ変わった影響もあるのではないか。古豪・ゴールドマインの前走は騎乗ミスの感があり、あまり気にするこはない。実際、直線最後はきっちり伸びて掲示板まで来ている。だがそもそもここは距離が長いように思われるだけに、トウケイニセイ記念で改めて。

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<まとめ>
◎4番カミノヌヴォー
○11番サクラマジェスティ
▲8番コアレスランナー
△12番ツルマルヤマト
△10番トーホクキング

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