2013年度2歳馬血統診断No.2 ロックザアゲイン、ウィンカイザーほか

No.3 ロックザアゲイン(牡馬 岩手・菅原勲厩舎 服部牧場生産)

 6月9日の盛岡名物・芝1000m認定競走にて2着。本来なら勝ち馬の方を取り上げるべきだが、あのロックハンドスターの半弟が、菅原勲厩舎からデビューしたとなるとさすがに無視するわけにはいかないだろう。まあ、兄も芝のレースでは格下相手に敗戦していることだし……東日本大震災を境に競走成績が暗転し、最後は「岩手競馬支援」の府中開催の南部杯で秋空の果てへと散ったロックハンドスター。まるで自分に与えられた「岩手の星」の名を、どこまでも体現したかのようだった。2歳時から「今年の岩手には強い2歳がいるらしい」とネットで噂となったほどの、あの期待感を岩手の地へ再び。ドクターコパの所有馬だけに、それなりに走るようならフットワークも軽く、全国各地へと遠征もしてくれるはずである。なんとか、次で初勝利を挙げて欲しいところだ。
 しかし地方競馬の活躍馬など血統的には雑草のようなものと考えがちだが、少なくともこの馬に関しては非常に筋は通っている。5代目母Mehrabiの母母Mah Iranと父母Mahmoudは、どちらもかの希代の名牝・Mah MahalにBlandford直子(前者はBahram・後者はBlenheim)を掛け合わせた3/4兄弟。こうした名血の凝縮は繁殖としてこそ真価を発揮するもので、結果4代母Ran-Tanは1969年のフロリダダービーなど重賞5勝を挙げたTop Knigh(父Vertex)を出し、さらに進んで3代目母Bold Bikiniは1985年の愛ダービー馬で英ダービーでも2着しているLaw Society(父Alleged)を筆頭に、数多くの重賞勝ち馬を輩出した。そして本馬の母・コンティンジェンシーの父もAllegedだから、リファールを1本含んだLaw Societyの3/4兄妹ということになる。こうして改めて眺めてみると、地方で走る馬としては最良の部類と言わねばなるまい。

 そしてこれに掛け合わせられるのが、やはり名牝の血を色濃く受け継いでいるカンパニー。5代目直系父のKalamounNasrullah(Mah Mahalの代表産駒)とその全妹Rivazの3×3を持っているので、5代目以降でこの血のさらなる強化を達成しているあたりに非凡なセンスを感じさせる。母父のノーザンテーストがLady Angelaの3 x 2を持つのはご承知の通りであるし、さらに近年は種牡馬の母としても改めて存在感を示しているバレークイーンを、血統表に導入することにも成功した。全体に母系へと入って評価される血で固められており、牡馬に出てしまったが繁殖牝馬としてこそ面白そうな馬ではないか。バレークイーンの濃いクロスなど、一度は試して見たい配合だろう。

No.4 カツゲキサクラ(牝馬 笠松柳江仁厩舎 飛渡牧場生産)

6月13日の笠松競馬・新馬戦にて48.8秒で1着。戦前の評判こそ4番人気だったが、終わってみればじっくり構えての競馬で2着のオグリローマンの孫・オグリガール以下を完封した。この時期の新馬戦で48秒台の時計というのはかなり優秀な数字であり、昨年の該当馬を振り返ってみても先日GRANDAMジャパン三歳シリーズで優勝を果たしたエイシンルンディー(8月13日、0:48.6)や、年末の東京2歳優駿牝馬にも遠征し4着のカツゲキドラマ(6月12日、0:48.6)のような重賞級の馬が含まれている。フサイチコンコルド産駒は早い時期から完成している馬の方が走る傾向があるだけに、この馬にもぜひ、来年の牝馬交流戦線に殴り込みをかけて貰いたい。
 しかしながら血統的に見てみると、母母ヒシカポーテが○外として大井で走り雲取賞・桃花賞(どちらもクラシックのステップ準重賞)を連勝したほかには、近親に目立った活躍馬は見あたらない。なによりCaerleonの2×3を筆頭に濃いクロスを複数持ち合わせることとなったが、これがどうにもまとまりがなく雑然とした印象だ。そもそも、1000頭を超えるフサイチコンコルド産駒にも、さすがにCaerleonのクロスを持っている馬は今まで2頭を数えるのみである。これを支えるボトムラインも底の深さに欠けている感じで、これまでのフサコンの活躍馬とはかなり雰囲気を異にする血統表となっている――そもそも、代表産駒のバランスオブゲーム (母父アレミロード)やブルーコンコルド (母父ブライアンズタイム、母母父ヴェンチア)を筆頭に、古くさく重っくるしいくらいの肌とよく合う種牡馬なのだ――。これで走ったら博打的な実験に見事成功したことになるが、さてさて。

No.5 ウィンカイザー(牡馬 川崎・八木仁厩舎 福田牧場生産)

 今年のクラシックは(も)まったくいいところがなかった川崎所属馬だが、早くも来年の東京ダービーを狙える器が登場したかもしれない。6月14日の川崎競馬・スパーキングデビューで1着も、単勝1.6倍の評価の割に勝ち時計は55.0と平凡そのもの。だが、これには道中5〜6馬身は離される致命的な出遅れという理由がちゃんとついている。そんな不利をものともせずにあっという間に馬群に追いつくと、直線はピンポン球が跳ねているような末脚の勢いでそのまま、ゴール板へと吹っ飛んでいった。そして叩き出した上がり3Fが、なんと35.7!火曜に稍重で行われたスパーキングスプリント(A1)ですら最速上がりは35.5秒だから、不良場場ということを考慮してもこの時期の2歳としてはちょっと考えられない数字である。素質の高さは十二分に示したと言え、距離の伸びる次走は絶対の注目だ。
 さて、母母リンデンリリーはご存じの通りあの岡潤一郎を背に91年のエリザベス女王杯を制した名馬であり、母としても母父ミルジョージのハンデ(ぉぃ)にも負けずヤマカツリリー(00年産、父ティンバーカントリー)を輩出している。Northern Dancerのそこそこ濃いクロスに名牝・Almahmoudの5×5が成立しているが、まさしくAlmahmoudがThe Tetrachのクロスを持つようにHerodないしはEclipseの中でもGainsboroughBlandfordSt.Simonあたりの非・Stockwellが5代目以降をしっかり下支えしており、素直にその良さが引き出せそうだ。リンデンリリーの古くさい雰囲気もこうして使うといいアクセントで、あとはミルジョージ・ガーサントの気の荒さノーザンテーストにどこまで中和されているかが勝負の鍵だろう――まあ、レースを見る限り気性面は絶望的なようにも思うけれど……。