2013年度2歳馬血統診断No.4 ポップレーベル、トーコーポセイドン

 はい、第一回で予感していたように1か月さぼったこのコーナー。そろそろだらっと復活してみますかね。

No.8 ポップレーベル(牡馬 北海道・廣森久雄厩舎 ノーザンファーム生産)

 デビュー戦こそ捉えきれない3着と躓いたものの、その後は距離を伸ばして3連勝。7日に門別で行なわれた2歳重賞・ブリーダーズゴールドジュニアカップでも決して向いた展開ではなかったが、不利を押しのけ初重賞制覇を果たしている。兄妹馬はお世辞にも走っているとは言い難く、母ポップチャートは自身こそ中央未勝利戦で2度の3着がある程度。だがその兄妹は06・07年と目黒記念を連覇したポップロック(父サンデーサイレンス)を筆頭にそれなりに大きいところで勝ち負けしている。現状、来年の南関東クラシックにおいてもかなり有力な候補といえるだろう。北海道2歳優駿が今から楽しみになってきた。

13年ブリーダーズゴールドジュニアカップ。7番が本馬。
13.0-13.3-14.0-14.0-13.3-12.2-12.9-13.6-13.3(1:59:6)

 父カンパニーは欧州系の父とバリバリにアメリカンな母がNorthern Dancerを介して交わるという配合だが、本馬の血統はそこにMr. ProspectorSecretariatを掛け合わせ、北米血脈のさらなる重ね交配を図るものとなっている。ただ2×5+4×5(血量28.125%+9.375%)という、それなりに濃い近交となっている一方で、そのほかの部分では5代目以前まで遡ってもわりあいにうまくばらけた構成。全体のバランスは決して悪くない。緻密な戦略で組み立てられたわけではないけれど、一発狙いとしては大いにありな配合だろう。

No9 トーコーポセイドン(牡馬 兵庫・吉行龍穂厩舎 オリオンファーム生産)

 8月7日の園田3R・初出走(よーは新馬だ)にて1着。距離820mで51.4(上がり36.9)というのは、普段園田をやり慣れていない自分にはどうにも判断しかねる。まあ、レースを見る限り距離が短いのは確かなようで、今回は木村健騎手が無理矢理に動かしてなんとかといった様子。今後の変わり身に期待といったところか。

13.9-11.6-12.6-13.3(51.4)
 で、レースぶりではイマイチなこの馬を取り上げた理由はといえば、この馬の母馬・Cruzada Americanaってブラジル産なんですよ。同じ南米でもアルゼンチンやチリは見かける機会がずいぶんあるけれど――近年日本での活躍馬の中で例を挙げるなら、ペルーサの母母Diferenteがアルゼンチンで走って4勝――、ブラジルとはちょっとお目にかかったことがない。そして、主な勝ち鞍がジョアン・セシリオ・フェラス大賞(GⅠ)。わかんねぇよ。そもそも馬名の「クルザダ」ってポルトガル語でどういう意味だ。まあ、それでも4代母・Pale Handsがイギリスから海を渡って以来、一族からのブラジル国内重賞勝ち馬は十指では足りない数を排出している名族ではあるらしい。いや、あれだけ広い国となると、重賞といってもわけのわからん弱小ブロックのレースもあるだろうけど。ちなみにまったく日本と縁がないわけでもないようで、6代目母Meralineの子Maranは日本に輸入されており、その際持ち込み馬として生まれたアズマテンランは61年の菊花賞を勝っている。 ※○外馬のクラシック出走が制限される馬輸入自由化は71年から。

1961年菊花賞。まさかこんなものまで上がっているとは……ちなみに鞍上は野平好男、管理調教師は二本柳俊夫
ダービーに続いて僅差で敗れたメジロオーメジロムサシの半兄で、のちにスマノダイドウの母の父。

 というわけで、なかなか珍しいブラジル牝系の同馬。まあよくよくみるとSt. SimonやらTeddyやらが中心で、そんなにお化けみたいな血統というわけではない。母父のNedawiは、英国で走って98年のセントレジャーを勝ち、翌年のキングジョージDaylamiの2着している馬だしね。全体の構成としては、ボトムのSt.Saimonへの押さえとしてのNearcoHyperionの使い方が肝。父父母父Nureyev=Northern Dancer×Hyperion→Aristophanesライン(Nearco:S3×M5 Hyperion:S4×M4)、母父母Wajd=Northern Dancer×HyperionAureoleライン(Nearco:S3×M4 Hyperion:S4×M5×M5)。いわゆる「ミスプロっぽく」ないキングマンボの傾向は母系に入ったヌレイエフによるもの(だと私は根拠もなしに理解している)が、それをさらに強めてやろうという配合となっている。まあダート向きなのは間違いなさそうだが、さてさて、果たしてこれは粘り強さが増す方に出るか、それとも加速に欠けるジリっぽさとなるか。