2013年度2歳馬血統診断No.5 ブラックヘブン、リーダーズボード

No.10 ブラックヘブン(牡馬 大井・鷹見浩厩舎 オリエント牧場生産)

 今週水曜日の大井2歳重賞・ハイセイコー記念で1着。これで通算成績を3戦2勝3着1回とし、有年騎手に9年ぶり2回目の重賞制覇をプレゼントした。父パイロアメリカで走ってルイジアナダービーを勝ち、BCジュブナイルでも2着するなど17戦5勝。引退後はダーレージャパン種牡馬入りすると、毎年安定して100頭以上の相手を集めるなどなかなかの人気を得ていたが、ここまでデビューした産駒の成績はいまいちパッとしない。母のトロピカルシルキーはシルクで募集され未出走に終わったが、3代母Pacific Princessはご存じの通りパシフィカス(父Northern Damcer)――ビワハヤヒデナリタブライアンの母――とキャットクイル(父Storm Cat)――ファレノプシスキズナの母――と近年日本での名馬が多く出ている名繁殖牝馬の母にあたる。ただ本馬の母母トロピカルサウンドII(父Fappiano)はカナダで3勝を挙げたのち早田牧場に輸入されたが、直子は勝ち上がり率こそよかったが大成功とまでは至らず。それでも00年のHTB杯を勝ったピサノガレー(父ブライアンズタイム)から道営の2歳重賞を2勝したモエレフウウンジ(08年産・父ゴールドヘイロー)が出たほか、本馬の半兄にも船橋1000m戦の名手ディープハント(07年産・父ブライアンズタイム)がいるなど、代を経て地方でそこそこの活躍馬を送り出している。

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 父パイロは父PulpitミスプロBold Ruler、ついでにナスキロというコテコテなアメリカ血統なところに、母父系は流行血統の傍流の中でも軽い親和性の高いライン。それを母母系の名牝クロスを多く抱える異系血脈が支える、というわかりやすい3分割構成。そこにお相手の方はというと、いまいち目立ったところのないのが正直なところ。早田にしては5代アウトブリードですらなく、ボトムでCanterbury Pilgrimが濃厚な確かさを持っているわりに上物が判然としない。それでもPacific Princessの相手がFappianoに変わった分Mr.Prospecterのクロスが生まれたほか、Wild Again≒Nureyev(IcecapadeNorthern Dancer)のふんわりとした疑似近交が、最低限Chaucerを強調することで淡白さが過ぎるのに一定の抑止を働かせている。ただこのクロスの成功例はあまりないのが現状で、本馬もややパワー不足な感は否めない。牝系の底力に期待したいが。

No.11リーダーズボード(牡馬 名古屋・川西毅厩舎 貞廣牧場生産)

 昨日のJRA認定競走セレクトゴールドでも6馬身差の圧勝を決め、これでついにデビュー以来6連勝。ひとまずは東海地区の2歳馬トップに君臨しているといってもよいか。母タイキアヴェニューは園田で走って05年の新春賞を勝つなど7勝、近親に04年のクリスタルカップを勝ち種牡馬入りも果たしたタイキバカラ(父サザンヘイロー)がおり、また遠親にはTapitやRelaunchといった名種牡馬の姿も見える。ブラックホークは短いダートが向く分地方の活躍馬をそこそこ送り出しているが、私にはなんといってもブルーホークが思い出される。坂井英光を背に重賞2勝を含めて17戦12勝、初のダートグレード競走となった08年の東京大賞典でもそうそうたる中央馬相手に果敢にハナを奪ってみせるなど(7着)、本来はポスト・フリオーソ世代の中核となるはずだった。それが腸捻転で急死してしまったのは本当にやりきれないところで、本馬には無事次代の東海トップへと成長していって貰いたい。

 配合全体を眺めた場合、母父ティンバーカントリーが肝。下手するとジリっぽさばかりが強調されそうなNureyev×Silver Hawkという構成のブラックホークには、なんとかスピード重視の血脈を補充してやることが不可欠。活躍馬の傾向をみてもそれは明らかで、最低限のツボはきちんと押さえられている。牝系も支えはしっかりしており、構成は悪くない。あとは距離が伸びてどうかだが。

12.9-11.5-13.8-13.3-25.8-13.0(1:30:3)