第61回北國王冠


 「長距離戦は騎手で買え」なんて格言が生まれるように、長丁場の中では必然的にペースの妙味・仕掛けの巧みさのドラマが生まれる。それを的確に読み取り、愉しむ眼力を身につけてこそ玄人というもの。もちろんスピードだけでなくタフさも要求される条件だけに、本当に強い馬・巧い騎手が死力を尽くし合う熱戦を演じることも多い。かつて菊花賞が「本当に強い馬が勝つ」と評されたのには、それ相応の理屈がある。

 とはいえ、今年から距離が再短縮され、2300mでの施行となった北國王冠。まあ、強い馬が強いなりに勝っただけと言えばそれまでの話なのだが……いつもながら、地方の長距離戦は面白みに欠けることが多い。3コーナーで既に一杯のジャンスマが、あの手応えから3着に残っていまう不思議。早い話が、勝ったナムラダイキチを除く全馬が道中追走だけで一杯一杯という情けない結果で、せっかくの距離短縮もあまり効果はなかったようだ。

 そもそもダートの長距離なんて条件は、過剰なまでにタフさが要求される至難の道。2400以上を王道とする伝統的な価値観の名残で全国的に重賞が設定されているものの、今の地方競馬の馬質では、明らかに足りない馬が出走馬中の大半を占めてしまうのは仕方がない。過酷な条件下での一発大レースというものは、粒さえ揃えばばんえい記念にのようにコンテンツとしての価値は高いのだけれど……再来週にはこれまた2600mで大井記念が開催されるが、まだ観られるレースとなることを期待したい。ところで、マズルブラストは7年連続出走してくるのかしらん?