有馬記念が終わって

 もう長いこと、有馬記念は地元の友人と現地観戦することが恒例となっていた。もっとも、別に誰が地元から引っ越したわけでもなし。今だってその気になりさえすれば、メール一本ですぐにお互い会えるような距離に全員がすっぽり収まっているはず。それでも人間、一度生活がすれ違えばなかなか交わることがないもので、同じ通勤電車に乗り合わせることすら滅多にないのが不思議である。今でも競馬を日常としているのは私くらいのものだが、にわか仕込みで馬の名を覚え、うろ覚えのレース名に戦績を照らし、ああだこうだと理屈にならない予想談義に花を咲かす。そんな有馬の楽しみは、むしろ素人ファンにだけ開かれた特権だろう。聞き飽きた学生時代のバカ話よりは、同窓会の肴にもよろしい。

 だが、今年はそれぞれ仕事や流行のノロウィルスで都合がつかず。中山までは自転車で30分ほどの距離に住んでいるとはいえ、この寒気の中一人で競馬場に行くのはなかなか億劫なものだ。結果、いつ以来かわからぬ有馬のテレビ観戦とあい成った。

 レースの方は、順当に前の脚が止まった中、大外からゴールドシップの追い込みが見事に炸裂。毛色は違えど、同じ父の先輩オルフェーヴルを彷彿とさせる捲りからの動きは見応えがあった。二冠馬としての格は十分みせたか。ルーラーシップは、出遅れがなくとも最後切れ負けした格好。来年も永遠の3番手馬で終わりそうだがどうだろう。

 トゥザグローリーは、もう終わってしまったのだろうか?良くも悪くも、母馬ともども有馬の馬券で個人的には思い入れがある馬。その持ち味は、本来母馬譲りの先行してからの粘り強さだったはず。それが春の天皇賞の長丁場で一端崩れてしまうと、その次からはそらの凡百の差し馬と変わらぬ、つまらない競馬をするように。いったい、打たれ弱かったのは陣営か、はたまた馬自身かはわからないが、今回のレースをみるにかなり参ってしまっている様子。今更になって母馬の幻影を追い、ダート挑戦までしてこの結果。立て直すのは容易ではあるまい。

 「昔は強かった」といえば、ローズキングダムオウケンブルースリの7歳2頭が、揃って馬群後方へ沈んている。今回の有馬自体出走馬の大半が4・5歳で、未だにエスポワールシチーを筆頭に年寄りどもが一線級に留まっているダート戦線と異なり、世代交代が完了した様子。これだけ強い馬が途切れなく輩出されるのはさすが天下の中央競馬で、一方南関東競馬の方はというと、ボンネビルレコードフリオーソが金曜の東京大賞典を持って引退を予定しているが、その次の顔役は未だ定まっていない。もう10年近く「今年の南関3歳クラシックは弱い」といわれ続け、近年はマカニビスティーの例もあるように、相手弱しと見くびられての中央からの参戦も目立つ。

 2歳馬の道営依存は全国的な流れだからともかくとして、古馬OP勢の中央崩れ率も年々高まっている印象を受ける。実際、準OPで頭打ちの馬を南関に卸せば、重賞で通用するのとしないのが半々くらい。それでいて、賞金額は中央OP特別並なのだからなるほどこれは美味しい話。だがそんなレースばかりだとこちらも買う気が失せてくるのが正直な感想で、重賞だからといって馬券を買うことも昔ほどはやらなくなった。もっとも、平場に関しては組の概念や騎手の腕前からいって、こちらの方が圧倒的に面白いこともまた確信している。とはいえ、騎手の方も来年に300勝していた戸崎の乗り馬が開くのだから、リーディング情勢の激変は避けられない。戸崎の後釜となると御神本は天才だが顔という柄ではなく、今野・森・真島・本橋あたりはまだまだ小物。横川怜央・山崎良あたりが一気にブレークしてくれれば、また楽しみが増えるだが……