忘れられた競馬雑誌『競週地方競馬』を読む(9)

(b)優秀騎手・厩務員の表彰
 年度代表馬が発表された翌月、つまり3月号で発表された。競馬場で行われる表彰式でリーディングジョッキーに賞状を手渡すのは白井新平オーナーその人で、当時の白井新平が南関東で占めていた地位を端的に示しているといってもよい。厩務員は「縁の下の力持ち」「地道で目立たない日ごろの努力」を表彰するもので、毎年10名前後が表彰された。今でも南関東競馬では厩務員への表彰を行っているが、この流れを汲んでいるのだろうか。このとき全員の出身地・学歴が公開されているのだが、なかには旧制中学らしきものを卒業した厩務員も見られる。社会的地位の低かった「馬丁」だが、その分色々な人が流れ込んでいたのだろう。

(b)三歳馬探訪記
 毎年、ダービー(春の鞍)が終わった後の7月号に掲載されていた新馬レポート。各競馬場のトラックマンが、その年の期待の新馬をレポートしていくという形を取っている。年に一度と言うこともあってわりあい多くの紙面が割かれており(10頁ほど)、写真の掲載も多い。POGのない時代ではあったが、ダービーが終わればさあ来年こそ当ててやる、という競馬ファンの人情(?)を捉えた企画だ。

(d)新人調騎のプロフィル
 やはりダービーが終わったのちに掲載される。いづれの場合も顔写真、出身地付き。ただ本人からの所信表明などがあるわけではなく、養成所の成績や出身地などから記者が評価をみたて、それに厩舎村から仕入れたちょっとしたエピソードを添えて掲載していた。2012年現在ではみな還暦を超えているはずで、そう思うと今から見る分にはなにやら不思議な感慨のある特集ではある。

(c)セリ市・抽選馬展示会
 特集の過半を占めていたのがこれらの特集である。どちらの記事もある意味でテンプレートに沿った構成であり、一般の競馬ファンにとってはそれほど見る価値のある情報ではない。だがメインの読者層であっただろう馬主・生産者などの関係者にとっては、商売柄重要な記事だったのだろう。これらの記事は比較的『昼夜通信』の方にも転載されている。

 セリの場所もメインとなる北海道だけでなく、東北、千葉、九州まで全国の馬産地を広く網羅している。さらには当然ながら北海道の中でも門別なのか、静内なのか、岩見沢なのか。東北なら八戸か、五戸か、青森か、水沢か、と各地のセリを分けて載せているので、毎回巻頭で結構なスペースをとっていた。内容も詳細にわたっており、特に各都道府県の馬主会・競馬振興会が買い上げる抽選馬に関しては、どこの競馬場が、どの馬を、いくらで買ったかまでを全て載せている。写真の掲載も多く、また当然セリ市の売却率や売上などの統計数字も充実していた。

 そして、その抽選馬を配分するのがこの展示会。多くの場合1頁だけの記事なのだが、それでも南関東競馬抽選馬展示会はほぼすべて記事となっている。主に高値の有力馬がどの馬主のものとなったかが記事の中心となっていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
<参考画像>

・1963年の新人調教師のプロフィル。06年NARグランプリ特別賞まで受賞した名伯楽矢作和人が当年デビューしている。

・セリ市記事の一例  

※サイズかなり大きいです。
権利者(ケイシュウニュース)から文句が来たら大人しく削除します。