The daily telegraph――Paul Bittarは語る「競馬の未来を護るため、BHAは強いリーダーシップを求めている」(2)

我々はちょうどメルボルン・カーニバルの初日、フレミントン競馬場のバルコニーにあるVictoria Racing Clubの管理者席で彼と出会った。彼はその日の午後をSky Televisionの取材に費やし、ロンシャンウィークエンドやドバイ・ミーティング、そして土曜のブリーダーズカップに対抗するオーストラリア競馬のお披露目であるダービー・デイ(GⅠ1つを含む9つの重賞が開催される)の舞台裏について取り上げた。

 メルボルンカップ・カーニバル開催の困難さにもかかわらず、Bittarは驚くほど爽やかで笑みを絶やさなかった。92,336の観衆と好天候・素晴らしいレース内容に恵まれこの大会は完璧なスタートを切ったようだが、そのためにごく当然の疑問は押しとどめられてしまった。なぜ、彼はこの素晴らしい環境を離れ、多くの問題に苛まれており分裂によってその存続すら危うくしている英国競馬へ転身するのか?

 彼は率直に語る。「英国での仕事を決めてからも、自分が正しいことをしたのだろうかと迷ってなんかいない。というのは嘘になりますね」
 では、ムチの使用やブックメーカーの負担金、最低賞金表についての直近の議論をうけて、考え直すようなことはなかったのだろうか?

「それでもやはり、私は自身の決定に対して本当に満足していますよ。確かにここでもメルボルンカップでは素晴らしいレースが行われますが、メディアの報道や大衆の関心という意味ではせいぜい年に6週間といったところでしょう。英国競馬の質や規模にはかないませんよ、あそこでは年中そうなんですから」
 と、彼は語った。
 
 Bittarは、競馬界におけるBHAの役割を再建する必要を理解しているように思えた。お互いに主導権を得ようともくろんでいる競馬場運営側と馬主側とのやかましい対立や、それと負けず劣らずやっかいなブックメーカーとベッティング・エクスチェンジ運営会社の過剰負担を巡る論争のために、現在BHAはその仲介役としての役割を発揮するのに理想的な状態にある。
「私は、これらの内部対立での独立性を前向きにとらえています。私はどの派閥にも属していませんから。イギリスでは公然とした議論が数多くありますけれど、私はもとよりけんか腰に振る舞うつもりはありません」と、説明する。

 彼は日々公の関心を増していく賭博産業との議論について関心を持っている。実際のところ、ブックメーカーは将来的に顧客に対して自前の配信画面を提供できるようになるだろう。「The prime focusは確かにありふれたモデルとなっていくでしょうが、私は賭博産業とよりよい関係を築いていきたいと考えています」

 Wagga Waggaで生まれたBittarは、すでに英国のthe British Horseracing Board(BHAの全身)で働いたことがある。オーストラリア復帰の前職である、New Zealand racingの最高責任者になる前の話だ。彼は」BHBで働いた経験を持つオーストラリア人Greg Nicholsが、BHAでの仕事を引き受けないよう助言していたことを認めた。

「けれども伴侶であるJacquiともども、私は英国を愛しているのです。私たちには13ヶ月になる息子がいますが、この子が幼いうち、学校やそのほか諸々の問題に悩まされる前に、英国に戻り時を過ごすことはよいことだと考えています」

 インタビューは着席で30分ほどだったが、ついにムチ使用に関してはまったく語られなかった。しかし我々が遅れながら席を立とうとしたとき、BHAの新たな最高責任者は非常に興味深いひとことを漏らした。
「僕はなぜわざわざChampion dayの前に、かれらが新しいムチ使用規定を適用し始めたのかわからないな」

「Paul Bittarの成功へのマニフェスト

(1)負担金の再建
ベッティング・エクスチェンジ各社やオフショアしているブックメーカーから負担させる。

(2)英国競馬の産業構造・モデルを定める
派閥抗争は泥沼化している。英国競馬を傷つけるこうしたケンカはただちに止める必要がある。

(3)賭博産業界とよりよい関係を築く
ブックメーカーはレースを顧客に直接レース映像をパソコンから提供している為に、非常に重要だ。

(4)BHAの信頼性を取り戻す
未だかつて、これほど決定力と指導力が求められたことはない。

(5)出会い、触れる
定期的に競馬場に出向き、競馬ファンと交流すべきだ。

元URL:http://www.telegraph.co.uk/sport/horseracing/8858625/Paul-Bittar-says-BHA-needs-strong-leadership-to-secure-racings-future.html

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 BHAは、日本の地方競馬でいうとNARに相当する統括組織ですね。日本競馬に負けず劣らずファン離れや売上の低迷(Toteという半国営ブックメーカーもいまやぐだぐだ)に悩む英国競馬ですが、その指導者をオーストラリアから引き抜いてくるというのは、さすが腐っても大英帝国。良くも悪くも、ぐろーばるな感性のレベルが違います。翻って我が国の競馬のドンJRAは、21世紀になってやっとこさ天下り以外のトップがでたなど喜んでいるていたらく。なんとかならんのですかねぇ、それ。