反省会といいますか

 敢えてはっきりと申し上げておきますが、わたくしも大井競馬もまったくもって完膚無きまでの完敗でございました。

12.0-10.4-11.4-12.7-12.3-13.5(1:12.3)
 いやね、正直9Rを見終わった時点ではかなり自信があったんだよ。今日の大井は昨夜のうちに一雨降ったことにより、すっ飛ばした逃げ馬がかなり残れる馬場へと変わっていたので。調子が戻っているなら我らがブリーズフレイバーが、韓国勢にテンでひけを取るはずがない。繁田がきっきり仕事をやってくれりゃ一発あるぞ、と皮算用をニヤニヤ愉しんでおったわけだ。それがパドックで馬を見て見れば、+4の馬体はまあいいとして腹回りに冬毛がもっさもさ。踏み込みほかもうーん、こんな馬だったか?……まあ、それでもきっちりスタートを決めてくれたのはさすがだったが、まったくそれ以上に韓国勢のダッシュ力は脱帽するしかないものだった。ゴーディにしろ、あれでも一応自己ベスト近いラップで前半を走っているはず。多少は馬場の後押しがあったにしろ、それで押し切ったワッツヴィレッジは本当に強かった。なによりいかなる馬場状態であろうとも、大井1200の2F目で10秒台前半を叩き出して勝ったという事実がその非凡な力を証明しているだろう。韓国の短距離型として現状突っ走る走りしかできないのは確かとはいえ、仮にこのレベルの馬が地方競馬から出てきていたらわたしゃもう大感激で統一グレード重賞を夢見てるだろうさ。着差こそ最後まで迫ってのクビ差だが、ホームでの開催であることを思えば短距離での適性の差も含めて、こりゃ負けましたね諸手を挙げて降参するしかあるまい。えっ、潰れると思って油断していたから差し漏らしただけ?最初の3Fはともかく、コーナーを12.7-12.3で回られておいて追い後れるくらいなら、最初から1200になんか出してくんなよ。あくまでアメリカ産馬であって韓国に負けたわけじゃない、だ?ふーん、シーキングザパールタイキシャトルアグネスワールドアグネスデジタル、そしてエルコンドルパサー。このいずれにも心ときめかなかったものだけが、その言葉を投げてくださいな。…………地方の駄馬に勝っただけで喜ぶなんてまだまだだって?いや、ほんとすいません。まったくもって返すお言葉がございませんね。

参考:13年東京盃。12.3-10.7-11.4-12.4-11.7-12.5(1:11.0)
 さて、韓国競馬界にとってはおそらく将来にわたってそれなりの意義を持つことになっただろうこの一戦。韓国側は大井の1200を攻略すべく、かなり用意周到に準備をしてきたように思われる。馬選びからしてそもそもワッツヴィレッジは本国では短距離の使えるレースはろくにない状態にあり、それでも適性をきっちり見抜いて送り込んできた当たりはさすがと言えるだろう。そして日本競馬、さらに言うならば大井競馬をそこまでして乗り越えるべき対象として見てくれるというのは、少なくともファンの目線からすれば非常に新鮮なことなのではないかな。関係者側が世界に追いつけ追い越せで、走り続けて数十年。それ相応の成果は生まれたと自負してもいいように思われるが、それでもわれわれにとっての競馬とは、未だに世界の頂点を目指して戦う「挑戦者」の視点を出るものではなかった。凱旋門賞に日本の一流馬が複数頭で乗り込むことはあっても、種牡馬入りのお目見え以外でジャパンカップに挑戦していっちょうちの馬の強さを示してやろう、なんて陣営はついぞ現れたことはない――一時期のオセアニア勢が近いと言えば近いが、あれは欧米の一流馬の参加があってこそだろう――。このあたりが、社台なんかよりもよっぽど近年の競馬についての語りの閉塞感の一因となっているようにも思われる。端的に言えば、いい加減凱旋門賞は今年あたりで勝っちまうべきだったんだが。

 すると我々の義務はこの勇敢なるチャレンジャーに対して、全力をもってぶつかってやることなんじゃないか。ガチンコでやってこそ興行としての演出が盛り上がるももちろんのこと、なにより南関東競馬60ウン年の歴史を背負っている以上、こっちだってそう簡単に負けてやるわけにはいかんのである。来年はホームの勝負には、奢ることなくありったけの戦力を投入していただきたい、っつうのも馬主さんやらで難しいんですけどね。まあ、でもそれくらいの意気込みでことに当たって欲しいと言うことで。ただ一心に追う立場から追われもする立場へ、そして併せ馬は2頭の気持ちがしっかりとあってこそ、最高の成果を産むものではないか。

 まあひとまずは、最高のレースをしてくれたワッツヴィレッジ陣営にありったけのおめでとうを!

若干24歳にして韓国競馬界でリーディング上位に食い込むソ・スンウン騎手(左)と、馬主の美人様(右奥)。韓国競馬の馬主資格中央競馬以上に基準が厳しいと聞くが、いったい何者?