第55回九州ダービー栄城賞


 今年も地方競馬が贈る同時多発的お祭り開催、ダービーウィークがついに始まる。各主催者間の施行日などの調整に加え広報面の活動も一応NARのお仕事であるが、ここ2年は某アイドル・グループの亜種を使った親父趣味と代理店の営業丸出しのもの。それが今年は趣向を変えて、著作権フリー化した『ブラックジャックによろしく』によるコラパロCMに。なるほど、これなら制作費を大幅に圧縮できるだろうし、なにより数だけは多いせいでごちゃごちゃした画面となったあれとは違い、伝えることを絞りすっきり仕上げた構成にも好感が持てる。なかなかの良企画ではなかろうか。

 さてさて、「面白いに決まっている」ダービーウィーク第1戦目は、九州最後の地方競馬場佐賀競馬場の2000mにて行われる九州ダービー栄城賞(S1)。九州三冠1冠目・飛燕賞を圧勝したロマンチックが休養に入ったため、馬券的にはじつに難解な一戦となった。圧倒的な地区のエース不在といえば、近年では脚元不安でウルトラカイザーが回避した2011年のダービーが記憶に新しい。あの年は最後の荒尾ダービー馬リリー――といっても佐賀所属だが――が単勝1.2倍から豪快に吹っ飛び、5番人気の伏兵・コスモノーズアートが優勝。ヒモも4番人気→7番人気で決まったため、三連単で77万3000円という、佐賀では滅多に観ない大荒れの配当が飛び出している。今年はいったいどうなるのか、予想のしがいがあるレースである。

 しかしまあ、本命は平凡にダイリングローバル。ここ2戦は調整がうまくいかず、出遅れ癖が付き気味で追ってからの掛かりも遅い。それでも終いはしっかり伸び、前走の鯱の門特選でも、バカみたいに大外を回しながら最後の一歩までビックナゲットに詰め寄る見限れない競馬を見せている。復調すれば2月の日峯特選のようにこのメンバーを完封できる実力はあり、脚質的に距離延長に不安がないのも強みだ。ゴールドペンダントも飛燕賞ではロマンチックに勝負を仕掛けた分の消耗があり、それで2着と差のない3着なら上出来だろう。3連勝で臨むここはこと順調さに関してはメンバー中一番であり、スムーズに前々から競馬を進めれば連絡みまではまず間違いない。


 遠征のコパノエクスプレスだが、この馬は本当に取捨の選択が難しい。道営時代の時計は今回のその他元道営馬からアタマ一つ抜けている一方、南関3歳末期の戦績は、格付け面での力関係(南関3歳1組=C2格付け相当=佐賀B2上位)を考えた場合決して褒められたものではない。高知でのA3組勝ちはかなりのものだが、一方あの日の高知の不良場場はかなり特殊な状態だったようにも思え……今回は3着までの評価にとどめておく。オリンポスも距離面での不安は否めないが、ミヤノストリートを下してのB3組勝ちは上々。ただ0.6秒差の3着だったカシノペンダントは、鯱の門特選の翌日行われた佐賀皐月賞で走り、時計は1:58.3の上がり39.4。鯱の門特選にそのまま当てはめると、まあ掲示板かというレベルである。最内から逃げ残って離された3着は十分にある展開と思うのだが、一方それ以上はなかなか想像しづらい。

 ル・プランタン賞では地元勢唯一の掲示板入りを果たしたビックナゲットだが、1750戦ですら毎回最後に脚が鈍る。距離延長がマイナスに出そうで、2000mの今回は中心視まではしにくい。2歳時にはロマンティックに勝ったとこもあるタカノアラエビスも、復帰後の2戦はいいところがない。一抹の不気味さはあるが、ここは来たらお手上げということでひとつ。今回唯一の九州産馬であるエスペランサは……とにかく元気に回ってきて欲しいね!

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<まとめ>
◎7番ダイリングローバル
○9番ゴールドペンダント
▲5番コパノエクスプレス
△1番オリンポス